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は や と の 風 と 駅 の は な し ■

吉 松 駅

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■24年ぶりの特急
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1974(昭和49)年4月、この駅に初めての特急列車がやってきました。博多と宮崎を肥薩線・吉都線経由で結んでいた急行「えびの」の1往復を格上げした「おおよど」号です。当時は博多〜西鹿児島間を日豊本線経由でロングランする「にちりん」が1往復あり、宮崎以南が電化されていなかったため専用のDCが使われていましたが、この車両の間合いを利用して運用された列車です。このとき既に日豊線は全線電化に向けての工事中で、6年後の1980(昭和55)年に電化が完了、特急「にちりん」がすべて電車での運用となりDCが撤退した為、共通の車両を使用していた「おおよど」の運行も終了し、もとの急行列車に戻されました。
いわば期限付の「おまけ」的な特急の運行でしたが、当時の肥薩線・吉都線は福岡と宮崎を結ぶ最短ルートとして旺盛な需要があり、グリーン車付き7両編成の特急が、多くのビジネス客を乗せて真幸のスイッチバックや大畑のループ線を走行していたわけで、今となっては夢のような光景です。SL全盛時代の吉松駅の繁栄は知る由もありませんが、高速道路開通の足音が近づいてくる中で、この路線が輝いていた頃と言えるでしょう。
1995年に九州自動車道が開業した後の肥薩線の凋落ぶりはひどいもので、わずか5年で熊本と宮崎を結ぶ急行列車が全廃。それ以降の吉松駅は1・2両の普通列車が発着するだけの寂しい駅になってしまいました。96年からは「ゆっくり走る観光列車」として、「いさぶろう・しんぺい」の運転も始まっていましたが、「山線」と呼ばれる人吉〜吉松間は路線の廃止まで検討されていたんだとか。しかもそれが「仕方ない」とみんなを納得させてしまう程の状況だったと・・・
そんな厳しい冬の時期を4年も過ぎた2004年3月、吉松駅に優等列車が戻ってきました。しかも「特急」として。新幹線に接続して霧島方面への観光輸送を担う「はやとの風」は2往復。1往復でも7両で400人を運べた「おおよど」に比べれば超低定員の2両編成はいかにも細々としたパイプですが、24年ぶりにやって来た漆黒の「風」は、この山あいの地に鬱積していた閉塞感を吹き払う力を持っていました。駅前は美しく整備されて野ざらしだった保存機のSLにも屋根が掛けられ、山線で孤軍奮闘を続けていた「いさぶろう・しんぺい」にも豪華な専用車両が投入されて肥薩回遊ルートに組み込まれ、多くの観光客で賑わうようになりました。
鉄道が移動手段の主役だった頃の吉松駅の賑わいを知っている人から見れば、この状況でも寂しい限りでしょうが、2009年11月には山線の開通(=肥薩線の全通)100周年を迎えます。SL人吉号の復活もありますし、今後も肥薩線は話題に事欠くことはありません。そして、TVが地デジに移行するより早く、九州新幹線は2011年春に全線開通の予定・・・
その時にはまた、南九州の観光列車も大きく変わるかも知れませんね。
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■構内営業「たまり」さん
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吉松駅の観光列車が発着するホームには、懐かしい佇まいの売店(08年10月にリニューアルしました)があります。別に珍しくもないと思うかもしれませんが、県都の鹿児島中央駅はともかく、乗降客も列車本数も多い日豊線の鹿児島駅や隼人駅にも、ホームの売店はありません。更に、肥薩線に入ってしまうと無人駅ばかりなので、当然物を売る施設などあろうはずもない状況。幸い「はやとの風」は車内販売が充実していますが、それでもこの売店は砂漠の中のオアシスのような存在として、列車を乗り継ぐ多くの旅人の心をも潤しているのです。
正式名称を「吉松駅鉄道構内営業」という「たまり」さんが、この駅で商売を始めたのは何と大正4年で、現在のご主人で4代目になるとの事。熊本方面と宮崎を直通する列車は、ここで進行方向が変わる為に、優等列車でも必ず停車時間があり、そのお客さん向けにお弁当などを販売していました。九州自動車道が開通するまでは、グリーン車付き6両編成の急行「えびの」が多くの乗客を乗せて行き来し、たいそう賑わっていたとか。最盛期には立ち売り3名体制で、お弁当だけでなく、うどんやそばをワゴンに乗せて販売していたそうです。
しかし1995年に高速道路が開通すると、福岡と宮崎を結ぶ高速バス「スーパーフェニックス」が登場。時間的にも料金的にも急行「えびの」は全く太刀打ちできず、以後、ダイヤ改正ごとに運転区間と編成の縮小を繰り返していきます。そして2000年の3月には3往復すべてが廃止という、衝撃的な幕引きを迎える事に。吉松駅は普通列車しか来ない、寂しい駅になってしまいました。その後程なく、「たまり」さんの売店もシャッターを下ろします。列車の乗客が通学生メインでは、もう駅弁を売る相手がいないと言うことなんです。
かくして、「たまり」さんの構内営業の歴史も、これで終わってしまったかに見えました。駅売店を閉めた後は、地元の方向けの仕出しや、駅職員や列車乗務員用のお弁当を作ったりして、細々と営業を続けていたそうです。
苦境の時期は4年も続きましたが、それでも辞めなくで良かった!九州新幹線の開業で誕生した「はやとの風」とリニューアルされた「いさぶろう・しんぺい」。2つの観光列車はこの駅で相互に接続し、乗り継ぎ駅として再び賑わうようになったのです。そして、ちっちゃな売店のシャッターも再び開く日がやって来ました(撤去しなくて良かった!)。飲み物の自販機すらない吉松駅のホームで、この売店はどんなにありがたく心強い存在であることか。再開後しばらくは週末と多客期のみの営業でしたが、今はほぼ毎日開けているそうで、車内販売が品切れになって、飢餓状態に陥りやすい平日午後の列車の乗客には、「救いの神」となる事もしばしば。私も幾度となく、ここのお弁当のお世話になっています。本当にいつもありがとうございますと、この場を借りてお礼を・・・
ホーム売店の営業時間は、観光列車の発着に合わせて10時半頃から15時頃まで。但しお昼休みがあるので、13時頃に行っても閉まっていることが多いそうです。
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↓リニューアル前の売店の様子。これはこれで味があって良かったです。週刊誌の棚のポテトチップが懐かしい・・・
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■「たまり」さんのお弁当
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吉松駅のホーム売店で売っているお弁当は、幕の内1種類のみ。有名駅弁が目白押しの肥薩線にあっては少々地味な存在ですが、おそらく何十年も変わっていなさそうなその雰囲気は、レトロな列車の旅のお供にうってつけ。観光列車の乗客向けに立ち売りもしてくれるので、列車の窓を開けて買う、なんて事もできます。そう言えば、この駅には窓の開かない列車は来ないんですね。
お弁当の内容は日替わりで、2日続けて買ってもおかずが全く同じということはありません。薩摩揚げや「がね」は定番ですが、9月も下旬のこの日は、かぼちゃの煮物や栗の渋皮煮が入っていて、夏の名残の苦瓜の和え物と共に季節の移り変わりを感じる事ができました。少し濃いめの味付けなので、たっぷりの白ご飯もどんどん進みます。もうお腹いっぱい、大満足です。これで値段が630円だなんて、ありがたいを通り越して、儲けはあるのかと心配になってしまう程。
そんな良心的なお弁当ですが、取り扱い個数はかなり少なめなので、確実に手に入れるには電話で予約をオススメします。→「たまり」さん Tel 0995−75−2046 前日の夕方くらいまでに予約すれば、売店の営業時間外でも駅のホームや待合室に届けてくれます。ちなみに、予約のお弁当は掛け紙がSLの図柄に変わり、ご主人曰く「上等の掛け紙」なんだそう。
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乗り継ぎの合間、時間があれば立ち寄ってみて下さい。
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■SL資料館と燃料庫
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吉松は今でも「SLの町」とPRしていて、駅の待合室や駅前にもドーンと大きなパネルを掲示しています。美しく整備された駅前広場にはSLに関連した施設もあり、いずれも「はやとの風」2号が到着する頃には開いているので、気軽に見て回って、乗り継ぎの時間潰しにはもってこいです。
駅舎から一番近いところにある白い建物が「SL資料館」です。スペース的には小さな物ですが、特にSLに関心がなくても、肥薩線の概要や吉松駅の歴史、山の神第2トンネルで起きた事故の記録なども展示されていて、これから「しんぺい」号で山線に向かう際の予備知識を得ることもできます。
その隣の石造りの建物は「燃料庫」。石炭を貯蔵していたところですが、今でも少量の石炭が中にあって、換気で窓を開けているときは、周囲に独特の「におい」が漂います。2007年11月に経済産業省が創設した「近代化産業遺産」の施設として認定されていますが、防災上の観点から中には入る事はできません。
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■SLと観光SL会館
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燃料庫の隣にあるのが「観光SL会館」。客車をイメージしたという建物は、入って左側が売店、右側が食事処になっています。売店にはお土産品をはじめ、地元の方の手作りお菓子や、ここでしか売っていない「はやとの風」「いさぶろう・しんぺい」関連のオリジナルグッズなんかもあって、なかなか楽しい品揃えです。
食事処の方はボックスシートのようなゆったりとした作りになっていて、定食などのちゃんとしたメニューもありますが、ここで有名なのがソフトクリーム。濃厚なミルク味のなめらかな口溶けで、しばしの間、しあわせな気分に浸ることができます。
尚、この「SL観光会館」には洋式のトイレが設置されていて、その旨の告知もあります。吉松駅のトイレは古くて和式のみなので、抵抗のある方はこちらを利用するのがいいでしょう。
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駅前広場の端っこにSLが保存されています。このC55 52機、以前は野ざらしに近い状態に放置されていましたが、今では立派な屋根が掛けられ、黒い塗装も美しく展示されています。
実は観光会館を造る際に、客車をモチーフにした建物とこの機関車をつなげようという考えがあったらしいのですが、長さ的に敷地に収まらず、やむなく直角の配置に変更されたそうです。
結果的にではありますが、この配置の方が機関車の存在感が増して、良かったんじゃないかと。
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■汽笛饅頭
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吉松駅から国道へ続く道を3、4分歩くと、有名な「汽笛饅頭」を売る「みやした菓子舗」さんがあります。ご主人の鉄道好きが昂じて、お店の工房を客車の形に作ってしまったほど。建物の外観も客車のイメージで、丸い屋根が特徴的です。
吉松の名物として多くのサイトでも紹介されている「汽笛饅頭」は、SLの燃料である石炭を模しています。白あんの饅頭を油で揚げたお菓子で、1コ100円。バラで売っているのは包装がちょっとズレたりした、いわゆる「アウトレット品」で、10コ買うとおまけを付けてもらえます。気になるお味は、生地と白あんが揚げる事で乳化寸前まで一体化していて、口の中で溶けて消えてしまうような食感。昔からのレシピを守り続けているのか、甘さはかなりのレベルです。実を言うと、ドーナツなんかの揚げ菓子が大の苦手の私には、かなりキツかった・・・
さて、この「みやした」さん、お客の相手をする奥さんもかなりの鉄道好きで、知識も豊富です。店内でお茶のサービスもあるんですが、ヘタに話が合ってしまったらもう大変!30分、1時間と店から出られなくなるので注意しましょう。私がお邪魔した時は、菓子箱の包装紙に印刷されている「鉄道唱歌」の肥薩線区間を生歌で紹介して頂く程の大サービスで、とても楽しいひとときを過ごすことができました。乗り継ぎの合間に行かれる皆さんは、くれぐれも時間にご注意を。
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■駅前温泉
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道路を隔てて吉松駅の向かいに「駅前温泉」があります。乗り継ぎの合間に温泉なんて!と思うかも知れませんが、本当に駅の真ん前で近いし、泉質もいいので紹介します。本当は、ゆっくりと楽しんでもらいたいのですが・・・
平成16年にリニューアルされた施設は清潔で気持ちいいです。檜を使った浴槽は広々として、そこに少しとろみのある無色透明なお湯があふれています。入浴料は250円、タオルを持っていなければ販売もしてくれるので、お気軽にどうぞ。
営業時間は9:00〜20:00(10月〜3月は10:00〜20:00)、基本的に無休だそうです。
脱衣所の窓からは吉松駅が正面に!「駅前温泉」まさにその通りですね。
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