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「はやとの風」3号は、14:47に4号として吉松に到着の後、折り返して鹿児島中央に向かう 列車です。しかし折り返しの時間が7分しかない上に、向かい側には人吉からの「いさぶろう」 3号が既に到着していて、乗り継ぎのお客さんが大勢待っているので、車内の整備をする余裕 もありません。ゴールデンウィークの期間中という事で、平日ながらかなりの混雑ぶり。客室 乗務員さんも2名体制です。 「しんぺい」4号が人吉に向けて発車した後のホームでは、構内営業の「たまり」さんが、最後 のひとがんばり、と、お弁当の立ち売りをしていました。昼食を食べ損ねて空腹だった私は、 救われた気持ちで1個購入。思えば吉松に来るたび、ここの駅弁のお世話になってるなぁ・・・
何となく慌しい雰囲気のまま、14:54、「はやとの風」3号は「たまり」さんに見送られながら、 鹿児島中央に向けて発車しました。実は、車内販売メニューを全品制覇するために、以前 一度乗った事はある(その時はまだ「日本一」ではなかった)のですが、ビールを2本空けて すっかりイイ気分になってしまい、やたら行き違いの停車が多かった、という事くらいしか記憶 に残っていないのです。 今日は素面で、しっかり「日本一遅い特急」をレポートしますよ。 ・・・でもまずは腹ごしらえ、です。いつも思うんですがこのお弁当、630円っていうのは凄く 良心的な値段です。
15:01、弁当を食べているうちに栗野に到着。以前は栗野駅周辺の案内放送で栗野岳温泉 と八幡地獄が紹介されていましたが、今回は霧島アートの森の紹介になっていました。屋外 展示がメインの美術館という事なので、季節に合わせて放送内容を変えているんですね。 それにしても、特急が停まるほどの規模の町のはずですが、駅はひっそりとしています。乗り 換えなしで行けるものの、この列車で鹿児島に出るには余りにも時間帯が悪く、おまけに速く もないのですから、使いにくいんでしょうね。栗野には高速道路のインターもありますし、車の 方が断然便利で速いですから。
まったく乗客の動きがないまま、すぐに栗野を発車。列車は続いて大隅横川に停まります。 到着は15:10。ここで最初の行き違い、向こうは吉都線経由都城行きの2930Dです。 今年3月のダイヤ改正から停車時間が5分に拡大され、列車を降りて見学することがが可能 になりました。「はやとの風」3号が「日本一遅い特急」になった理由が、この駅での停車時間 拡大です。ただ、下り列車は駅舎から線路を隔てて離れたホームに停まるので、築105年の 趣ある木造駅舎を見に行く人はいませんでした。
駅舎を見に行く人はいませんでしたが、ホームから見える木々の緑がとてもキレイで、乗客の 皆さんも午後ののんびりとした時間を思い思いに楽しんでいたみたいです。 ダイヤ改正の日はとんでもない大騒ぎだったのが、元の静かな駅に戻っていたので、安心 したと言うか、でもちょっと寂しいと言うか・・・
大隅横川の次は霧島温泉、対向列車が来る訳でもないのに15:21から5分間停車します。 ここで指定席から10人以上が下車。これからバスで霧島温泉の宿に向かうにはちょうどいい 時間で、下り列車もしっかり霧島観光のアクセス列車として機能しているのは嬉しい限りです。 そしてこの駅では、下り列車が駅舎側から撮影しやすい位置に停車するので、光の具合は 厳しいものの、簡単に編成全体を写すことができます。
「はやとの風」3号の行程はまだ3分の1程度ですが、霧島温泉でいっきに乗客が減った ので、車内の様子を撮影できるようになりました。実は5月11日までの期間、列車内の各所 に「はやとの風」の写真を展示した車内ギャラリーが開設されていて、楽しめます。どの写真 も素晴らしくて、それに比べてこのサイトの「TOP画像ギャラリー」の何とお粗末なことよと、 私は情けなくなってしまいましたが、それぞれの写真に付けられたタイトルから、撮影された 方のこの列車への思いが感じられて、嬉しかったです。
車内のギャラリーも素晴らしいですが、今の季節は窓の外の緑の美しさも一際です。 霧島温泉から隼人までの区間では、特に間近に木々の緑が迫ってきます。展望席に座って 大きな窓から眺めれば、まさに「目を洗う」景色。また座席の窓は開閉可能なので、爽やかな 風を感じて・・・といきたいところですが、実際はトンネルに入る時の風圧や走行中の騒音が ひどくて、まったく快適ではありません。尤もこの車両は本来特急用ではなく、気密性も低くて あちこち隙間だらけの様なので、自然に換気ができているようで、わざわざ窓を開ける必要も 無いのかも知れません。
次の嘉例川着は15:32、列車は駅見学の為5分間停車します。これで3駅連続の5分停車。 実にのんびりとしたもんです。でもそれに不満を言うお客さんがいるわけでもなく、みなさん楽 しそうです。そしてやはりこの駅は特別な存在なのか、前の駅では席を立たなかった人達も 全員列車から降りて、撮影会が始まりました。ここでは上り・下りに関係なくすべての列車が 築105年の駅舎のすぐ横に停まるので、記念撮影に向いています。名誉駅長の福本さんは 午前中しかおられませんが、車で見学に来ている人達も多く、特に「はやとの風」到着の前後 は、にぎやかなひとときです。
嘉例川から13分で肥薩線は終わりです。次の隼人到着前の車内放送では、日当山温泉の 紹介がありました。戊辰戦争を終えて鹿児島に帰った西郷隆盛が、山で狩をする時に借りて いた農家の表座敷が、「西郷どんの宿」として再現されている・・・というようなガイドも.。普段 は何気なく聞き流してしまったり、聞きたくても走行中の騒音で掻き消されてしまったりの車内 放送ですが、今日の客室乗務員さんは、トンネルに入るたびにアナウンスを中断し、出ると 再開、という方法で、ちゃんと最後まで聞き取れる放送をしていました。こんなささやかな配慮 に、JR九州の客室乗務員さんのレベルの高さを改めて感じた次第です。だってこうして何日 経っても、ちゃんと記憶に残っているんですから・・・ さて、隼人着は15:50、霧島神宮行きの特急「きりしま」88号と行き違いで4分停車します。 下りの「はやとの風」に乗ると、隼人から急に「日常」に引き戻されるようで、テンションも下が りがちなんですが、行程はまだ半分、ここからは日豊線の旅です。
時刻表では、隼人から鹿児島までの途中駅は通過になっていますが、実際には行き違いの 停車があります(もちろん、ドアは開きません)。で、次の加治木も然り。16:00から4分間、 上りの都城行き6948Mとの交換待ちで停車です。やって来た2両の電車は帰宅の高校生で もう大混雑!こちらは展望席からその光景を眺めています。
加治木から先はしばらく楽しめる景色もないので、ここいらでコーヒータイムとしましょうか。 メロンパンは売り切れということで、選んだのは「くるみクッキー(¥350)」。平日なので車内 販売のメニューも少なめですが、これは毎日販売なので大丈夫。バターとくるみのリッチな 味わいで、コーヒーとの相性は最高です。夕方前のゆるーい西日を受けながら、ゆったりと 流れる時間を楽しみます。
列車は重富を過ぎると錦江湾に沿って走ります。桜島も見えてきました。ワゴンサービスが 一段落した客室乗務員さんが、「篤姫」関連のパンフレットや鹿児島市内のガイド冊子を乗客 に配って回っていますが、ふと展望席のところで立ち止まり、じっと海の方を見ていました。 「桜島の稜線がハッキリ見える日は、イルカが現れる確率が高いんです」との事。私も しばらく目を凝らしていましたが、そうそう見れるものでもないようで、また次回のお楽しみ、 という事になりました。
美しい海岸線を見ながら走る路線の途中に、竜ヶ水の駅があります。鹿児島まで一駅という 近さながら、度重なる背後の山からの土石流で、人の住めない所になってしまいました。普通 列車さえ殆どが通過してしまうこの駅は、もっぱら列車行き違いのための「設備」のようです。 「はやとの風」3号もここで宮崎行きの特急「きりしま」12号と交換。16:20から5分間、 穏やかな錦江湾を眺めながら、のんびりと待ちます。やがて構内の警報機が鳴り、真っ赤な カタマリがすごいスピードで通過していきました。
竜ヶ水を出ると、桜島が一番キレイに見えるポイントがあります。重富から鹿児島までの区間 では、ずっとその姿を見せてくれる桜島ですが、電線や電柱、木や建物に遮られて、なかなか スッキリと列車から見えるところはありません。ああ、この景色・・・でもこれが見れたらもうすぐ トンネルで、それを抜けたら鹿児島に着いてしまう、という事なんです。
鹿児島到着は16:33。ここからは鹿児島本線で、複線区間になります。すぐの発車ですが、 ここで上り宮崎行きの普通列車、6952Mと交換します。夕方のラッシュに備えてあちらは4両 編成。でもあの電車は座席の数が恐ろしいほどに少なくて、通学の生徒が床に座り込んで 大問題になった悪名高い車両ではありませんか?
鹿児島からは5分で終点の鹿児島中央です。16:38定刻通り、3番ホームに到着しました。 既に次の列車(実は私も乗る)を待つ長〜い行列が出来ていて、終着駅に降り立った感慨を 味わう余裕は全くありません。完全に「日常」の世界に引き戻され、車内でのひとときが一層 現実離れしたものだったと感じられてしまいます。 「はやとの風」3号は、吉松からの68、5キロに1時間44分を要して、速度は39、5km/H! 全行程のうちの30分は「停まっていた」という、凄い列車です。でもその遅さににイライラする 事もなく、もっともっと乗っていたいと思う程。ただ遅いだけでなく、楽しさもいっしょに「日本一」 の特急なのです。
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